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食道癌について②


食道がんの治療について

食道がんと診断された場合は、まず精密検査により、がんの進行度と全身状態を見極め、最も適した治療法を決めていきます。がんの進行度を調べるための検査としては、内視鏡検査やバリウムによる食道造影、CT、MRIなどが行われます。また、全身状態を評価するために、採血や心電図、呼吸機能検査などが必要です。
これらの検査を行い、進行度と全身状態から治療法を決めるわけですが、食道がんの治療法は大きく分けて5つあります。それは、内視鏡を使って治療を行う内視鏡療法、手術療法、放射線療法、抗がん剤を用いる化学療法、免疫チェックポイント阻害薬を用いる免疫療法です。浜松医科大学では、これらをうまく組み合わせて患者さん一人一人に合った最適の治療を提供するようにしています。

内視鏡治療について

食道がんは、食道の壁の一番内側にある粘膜に発生し、進行とともに食道の壁に深く浸潤していきます。この一番内側の粘膜にがんが限局している場合に、内視鏡治療の適応となります。食道がんは比較的早い段階からリンパ節に転移が起こることが知られていますが、この粘膜に限局した段階では、リンパ節転移はほとんど起こっていません。すなわち、食道の病変だけを完全に切除すれば、がんを治すことができる段階ということができます。
具体的には、内視鏡の先端から出る特殊な電気メスを使って、がんの範囲より一回り大きく粘膜を食道の壁から剥がしとってくる治療です。この方法は、内視鏡で行いますから、身体への負担が少なく、食道を切除することなくがんを根絶やしにできる大変すばらしい治療で、浜松医科大学病院では消化器内科が担当しています。外科に紹介された患者さんも、当院では消化器内科と外科の合同カンファレンスで治療方法の検討を行い、内視鏡治療の適応のある患者さんは消化器内科に治療をお願いしています。切除した病変は病理検査で詳しく検討され、予想以上にがんが深く浸潤していたり広く拡がっていた場合などでは、次にお話しする手術や放射線治療などの追加が必要な場合があります。

内視鏡治療について

がんが粘膜より深く食道の壁に入り込んでいるけれども、食道の壁を通り越して隣の臓器、例えば大動脈や気管などに入り込んでいない場合には、手術の適応となります。この場合、リンパ節への転移はあっても食道の周囲にとどまっていること、他の臓器、例えば肺や肝臓などへの転移がないことが条件となります。以上の様な状態は、食道がんの進行度、すなわちステージでいうと、IからIIIになります。数字が少ない方が早い段階で、数字が大きくなると進行した状態を示し、最も進行したステージはIVとなります。ステージIでは、そのまま手術を行いますが、ステージII 、IIIの場合は、手術を行う前に抗がん剤治療を行うのが標準治療となっています。これは、手術後の再発率を低くおさえるために有効な方法です。
食道がんの手術は、食道の切除、リンパ節の切除、食事の通り道を作り直す再建術の3つからなっています。食道の切除では、がんの部分を含めて、通常は首の付け根から胃の入り口までを切除します。リンパ節は、転移がある、ないに関わらず、転移が起こる可能性のある食道周囲のリンパ節を全て切除します。これは、手術前にCTなどで診断のできない小さな転移の可能性があるからです。切除が終わった後には、胃を細長い管状にして首の食道とつなげて手術を終了します。食道は、首からお腹に至る細長い臓器ですので、これを切除するためには、胸、お腹、首の3カ所の手術が必要であり、身体にそれなりの負担がかかることが欠点です。当院では、身体への負担を少なくし、手術後の回復を助けるための方法として、次に述べる低侵襲手術と周術期リハビリテーションに積極的に取り組んでいます。

浜松医科大学の特徴

浜松医科大学の特徴1
~低侵襲手術への積極的な取り組み~

低侵襲手術とは、これまで行われていた手術に比べて、患者さんの身体に対する負担を減らした身体に優しい手術です。食道がん手術では胸やお腹を大きく切って行う手術が行われてきましたが、当院では胸腔鏡や腹腔鏡を用いた低侵襲手術を積極的に取り入れ、2016年以降、食道癌手術の80%以上に低侵襲手術を選択しています。また、手振れのない正確かつ緻密な手術が可能となるロボット支援下手術を2018年から食道癌手術にも導入し、さらに体に優しい安全な手術が可能となっています(図2)。

図2

浜松医科大学の特徴1
~多職種による周術期管理チームの積極的な関わり~

食道がん手術は術後合併症の発生や手術死亡などの危険性が他の手術に比べて高く、安全に手術を行うためには手術前から手術後までの一貫した栄養管理やリハビリテーション、全身管理などが極めて重要になります。当院では2017年に周術期管理チームHOPE (Hamamatsu perioperative care team) を立ち上げ、食道がんの患者様の周術期の管理に積極的にかかわっています。このチームは、患者様を中心として医師、看護師、理学療法士、歯科医師、管理栄養士、薬剤師、検査技師、緩和チーム、精神科医師などの協力で構成され、術前の呼吸訓練、栄養管理、口腔衛生や術後の早期リハビリテーション、疼痛管理、嚥下訓練、さらには退院後の栄養管理やリハビリテーションの継続など、患者様を長期にわたりサポートします。このHOPEを導入することで手術後の合併症を軽減させることができ、安全かつ機能を維持した治療成績の向上に大きく役立っています。