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クローン病の外科治療


クローン病の外科治療のタイミング

近年のクローン病の内科治療(食事療法・薬物療法)は著しい進歩がありますが、一定の割合で手術が必要となる患者さんがいます。
一般にクローン病の患者さんに手術が必要となる割合は発症後5年で約30%、10年で約70%程度とされています。
手術の役割は内科的治療で改善できない部分のみを最小限治療することであり、クローン病を根治できるものではありません。
一生のうちに複数回手術が必要となる場合も多く、初期の段階から内科と連携し計画的に行っていく必要があります。

クローン病の手術適応

クローン病の手術適応には絶対的適応(救命が目的)と相対的適応(QOL:quality of life 生活の質の改善目的)があります。

絶対的適応

  • 腸閉塞
  • 腸穿孔、腹膜炎、膿瘍
  • 大量出血
  • ガンの合併

相対的適応

  • 腸管狭窄による経口摂食困難
  • 内瘻(腸と腸を含むその他の臓器とつながってしまう)
  • 外瘻(腸と皮膚がつながってしまう)
  • 難治性肛門病変(膿瘍、瘻孔)
  • 内科治療抵抗性、内科治療継続困難な状態
いずれの場合も腸管病変のみを最小限に切除し、術後の栄養状態を悪化させず、低侵襲の手術を目指す必要があります。
そのため適切なタイミングで手術を判断する必要があります。
多重瘻孔例などでは腸管切除量が多くなることは、狭窄部内視鏡拡張術も場合によって穿孔や出血が危惧されます。
絶対的適応になってしまった場合は、救命が優先され腹腔鏡手術など低侵襲手術が困難となります。
手術のタイミング判断は非常に難しい場合があり、消化器内科と消化器外科とが密接に協議検討できる専門施設や施設間連携が重要です。

クローン病の手術方法~腸管病変~

クローン病の手術方法は腸管に対しての手術と肛門病変に対しての手術があります。

腸管病変に対する手術方法
小腸のみ、大腸のみ、小腸大腸両方にクローン病ができる場合があります。病変の範囲や瘻孔の有無によって切除範囲や人工肛門造設などありますが、いずれの場合も最小限の腸管切除を目指します。
腸管自体を切除吻合する場合と、狭窄した部分を広げる手術に大別されます。

狭窄形成術

クローン病は病変が連続せずとびとびにできる(skip lesion)という特徴があります。すべて切除を目指すと腸管が短くなり、十分な栄養水分が吸収できなくなり、様々な障害が発生します(短腸症候群)。
そのため狭窄部を切開し腸管の径を広くすることで、とりあえず狭窄や閉塞のリスクを避け、内科治療による維持を目指します。

腸管切除吻合方法

病変が広範囲、瘻孔形成の場合は腸管切除吻合を選択します。
ガンの手術とは違い、残る腸管の血流維持、吻合部再狭窄予防、術後の内視鏡検査を念頭においた手術方法が選択されます。
一般的には吻合機械による機能的端々吻合が選択されています。腸管をストレートにつなぐよりも吻合径が広くかつ迅速に吻合できるという利点があります。一方で、腸管のねじれや術後内視鏡検査、治療がやりにくいといった欠点も指摘されてきました。
それらの欠点を改善するため201x年よりクローン病に対するKONO-S式吻合を標準として導入しました。この吻合法は血流を維持する側々吻合でありながら腸管がストレートになるように吻合し、再狭窄同時に予防していくというコンセプトです。10年以上の長期成績はまだでていませんが、短期成績では従来の機械による機能的端々吻合よりも、吻合部再燃狭窄再手術までの期間の延長、術後腹腔内膿瘍など合併症の減少など利点が多い結果となっています。

クローン病の手術方法~肛門病変~

クローン病患者さんは、肛門病変ができやすく、QOLの悪化の大きな要因となっています。
クローン病の肛門病変には、三種類あり、①クローン病の病変が肛門に発生(一次病変)、②その病変が原因となっておこってくる病変(二次病変)、そして、③クローン病とは関係なく偶然に発生した肛門病変(痔核、裂肛、痔瘻など)があります。

外科治療の対象となるのは、肛門周囲膿瘍や、その後の痔瘻です。浅い痔瘻には切開解放術、深い場合はシートンドレナージ法が行われます。ただクローン病の場合は痔瘻が複雑化し複数のシートンドレナージが必要な場合も多く、痛みや炎症が改善しない、肛門機能低下から便失禁を伴うことがあり、そのような状況では人工肛門(ストーマ)造設が必要となります。ストーマはできれば避けたい手術であること、肛門病変が理由のクローン病患者さんでストーマ造設した場合、永久ストーマとなることもあり、その選択は十分なICのもと行う必要があります。

ストーマ造設術のみでは局所の炎症が制御が出来ない場合、肛門からの排出が多く日常生活に支障をきたす場合、癌化のおそれがある場合には、肛門も含め直腸を切除して永久的なストーマとする直腸切断術が行われます。