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GIST(消化管間質腫瘍)について②


GISTに対する治療

遠隔転移のないGISTあるいはGISTが強く疑われる腫瘍に対しては、原則的に手術治療を行います。組織採取が難しくGISTの確定診断ができない小さな粘膜下腫瘍に対しては、無症状の場合は経過観察の方針となることもあります。GISTが見つかった時点で遠隔転移を伴っている場合は、内科的治療(薬物療法)の適応となります。薬物療法の効果によっては、経過中に外科的切除を考慮することもあります。
参考:http://www.jsco-cpg.jp/item/03/algo.html

GISTに対する手術治療の特色

当科での取り組み

図3

GISTは胃がんや大腸がんと比べ周囲の組織に及ぶこと(浸潤傾向)が少なく、リンパ節転移も非常にまれとされていますので、多くの場合は腫瘍の切除において臓器の機能温存を考慮した部分切除術が行われます。当院では比較的小さな胃GISTに対して、腹腔鏡下手術や腹腔鏡・内視鏡合同手術 (laparoscopy and endoscopy cooperative surgery: LECS)という低侵襲手術を行い、根治性(治すこと)と患者さんの身体への負担軽減を実現しています。
LECSとは、消化器内視鏡医による内視鏡手術と、外科医による腹腔鏡下手術の合同手術として、内科と外科の協力で行う手術をいいます。実際の手技としては全身麻酔下にまず腹腔内(腹腔:お腹の壁の内側で、胃などの臓器の外側の空間のこと)に炭酸ガスを入れて膨らませ、おへそから細い高性能カメラ(腹腔鏡)を挿入します。それに加えて、手術操作に用いる器具を挿入するために5~10ミリの小さな傷を左右に合計4-5ヶ所に開けます。通常の胃カメラの要領で、口から胃の中に内視鏡を挿入し、消化管の中の様子と消化管の外側(腹腔内)の様子を同時に観察しながら手術を行います(図3)。
GISTは胃の中に出っ張っていたり、外に出っ張っていたりと様々であり、腫瘍の場所を正確にとらえていないと消化管壁を余分に切除してしまうことがあります。従来GISTに対して行われてきた胃の局所切除術は、消化管の外側からだけの手術(腹腔鏡手術)であり、過剰に消化管壁を切除してしまうことがありました。そうした過剰な切除を避けるために考案された手術方法がLECSです。消化管の中と外から腫瘍を観察し、正確に範囲を見定めて切除することによって、切除する範囲を最小限にすることができます。これにより手術後の胃の変形を少なくし、胃の機能をほとんど損なうことなく手術することができます。
当科では、LECSの中でも特に消化管内腔を開放せずに胃全層を切除する方法(CLEAN-NET、 SAMIT、NEWS)を積極的に行っています。

図4

一方、大きなGISTの場合は手術操作に伴う腫瘍破裂・損傷などのリスクもあるため、安全性を優先して開腹手術を選択します。

手術後に病理組織検査結果より再発しやすさに応じた分類を行います。完全切除した後の推定再発率でGISTを分類したものがリスク分類です(図4)。肉眼的完全切除が行われた後でも「高リスク」と判定された場合は、イマチニブ内服による術後補助治療を原則として3年間行います。

切除不能・転移性GISTに対する治療

局所単独再発例などの特殊な症例を除くと切除不能・転移性GISTに対する治療の原則は薬物療法です。
薬物療法の第一選択はイマチニブ(商品名:グリベック)というお薬です。イマチニブは異常なKITタンパクを阻害することで抗腫瘍効果を示す、分子標的薬です。イマチニブは多くのGIST患者さんで有効性を示しますが、約半数の方で2年以内にイマチニブの効果が低下するとされます(二次耐性)。イマチニブ耐性となった場合にはスニチニブ(商品名:スーテント)、さらにスニチニブが効かない場合にはレゴラフェニブ(商品名:スチバーガ)を使用します。効果がある薬剤を副作用のコントロールをしながらできるだけ休まず内服し、可能な限り長く効かせて治療を継続することが重要になります。また、残念ながら現状の薬物療法のみでは再発や転移したGISTを完全に治すこと(根治)は難しいため、当科では薬物療法と手術を組み合わせた治療(集学的治療)を積極的に行い、治療成績の向上を目指しています(図5)。

図5

分子標的薬の副作用は、血液毒性、消化器毒性・肝毒性など従来の抗がん剤でしばしばみられる副作用だけでなく、皮膚毒性、循環器毒性、内分泌・代謝に関わる毒性など多岐にわたることが知られています。希少な疾患・特殊な薬剤であることから治療経験の豊富な専門的な施設での治療が望ましいと考えられます。浜松医科大学上部消化管外科では、内科や皮膚科などと協力して、また、多職種の医療従事者から構成されるチーム体制を構築して、多くのGIST患者さんの診療を行っています。