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肝臓癌について②


肝臓癌の治療方法はどのようにして決まるのか

肝機能が良い患者さんでは色々な治療法の中なら最も治療効果の高い方法を選択しますが、肝機能が悪い患者さんでは、治療効果だけでなく治療後の肝機能も考慮して治療法を選択します。一般的には腫瘍が3cm以下で1個だけなら、手術が最も治療効果が高いです。腫瘍数が3個以内で、大きさが3cm以下であれば、手術またはラジオ波焼灼術が推奨されます。腫瘍数が3個以内で、大きさが3cmを超える場合は、手術またはカテーテル塞栓療法が推奨されます。腫瘍数が4個以上の場合には、カテーテル塞栓療法や分子標的薬が選択されることが多いです。また、肝臓以外の臓器に遠隔転移を起こした状態の患者さんでは、分子標的薬が推奨されます。

肝臓癌の外科手術~開腹肝切除~

肝臓の手術には開腹肝切除といって大きくお腹を切る手術と、腹腔鏡肝切除といって傷の小さな手術があります。開腹手術では、お腹の真ん中を切る正中切開に加えて、横にも切開を加えて手術をすることもあります。傷の長さが合計で40~50cmになることもあります。開腹手術のメリットとしては、大きな視野の中で手術ができるので、安全性が高いとされています。また、肝臓や腫瘍を直接触って診察できるので、腫瘍との距離をリアルタイムに確認しながら手術を行うことができます。開腹手術のデメリットとしては、やはり手術後の痛みが強いことが挙げられます。高齢の患者さんでは、痛みによって痰がうまく出せなくなり、手術後の肺炎などを起こしやすくなってしまうこともあります。

肝臓癌の最新外科手術~腹腔鏡肝切除~

腹腔鏡肝切除は2010年に肝部分切除と肝外側区域切除が保険適応となり、2016年から肝亜区域切除や、肝臓全体の半分を切除する肝葉切除などの高難度肝切除も保険適応となりました。腹腔鏡手術は1cm程度の細いビデオカメラをお腹の中に挿入し、ビデオモニターにお腹の中の様子を映し出します。手術に使う器具はポートと呼ばれる1cm程度の細い管から出し入れして手術を行うので傷が複数箇所にできますが、傷全体の大きさは10cm程度で済みます(図1)。

図1:創部の写真

腹腔鏡肝切除のメリットはやはり傷の痛みが少ないことが挙げられます。そのため手術後の回復も早く、手術翌日にスタスタと歩ける方もいらっしゃいます。手術中のメリットとしては、ビデオカメラで拡大して観察することができるため、非常に細かい操作が可能で、出血も少ないと言われています。腹腔鏡肝切除のデメリットとしては、大きく臓器を動かすことができないため、手術時間は長くなります。また、出血を止める止血操作は開腹手術に比べると難易度が高いとされています。腹腔鏡手術は一般的に低侵襲手術といわれ、体の負担が少ないとされています。一方で、心臓や腎臓が悪い方には、長時間の腹腔鏡肝切除の方が、短時間の開腹肝切除よりも負担が大きくなってしまうこともあるため、慎重に適応を判断する必要があります。当科では、詳細な血管解剖の立体構築画像を作成し、手術前に十分なシミュレーションを行うことで安全性を高める努力を行っております(図2)。
また、正確な肝切離を行うために、蛍光カメラも併用しながら手術を行っています(図3、4)。

図2:立体構築画像。門脈(ピンク)、静脈(青)、腫瘍(緑、赤)の位置関係が把握できる。

図3:腹腔鏡肝切除の通常観察

図4:腹腔鏡肝切除の蛍光観察。切除予定部位は色が抜けて見える。