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胃癌について②


胃がんに対する治療

胃がんそのもの(原発病変)の深さや転移の程度(リンパ節転移、遠隔転移:肝臓、肺など)などを総合して臨床的な病期(ステージ)を診断します。ステージ診断をもとに、患者さんごとに評価して、よく相談して治療方法を決めます。主な治療としては、内視鏡での切除、手術での治療、薬物治療(化学療法)などがあります。

内視鏡治療

リンパ節転移の可能性が低く、がんが浅い部分に限局している場合などに適応となることがあります。内視鏡で胃がんを切除する方法で、粘膜だけを切除するためすべての胃が残る方法です。外科手術と比べると体の負担が少ない方法ですが、適応となる条件は限られていますので担当医とご相談ください。

外科手術

遠隔転移のない胃がんで、内視鏡治療が難しい場合には手術が推奨されます。胃だけではなく周囲のリンパ節も合わせて切除(郭清)することで、リンパ節に転移したがん細胞を含めて切除することを目的とした治療です。切除する胃の範囲や、郭清するリンパ節の範囲は、がんのある病変部位とステージから決めます。最も多く行われているのは、胃の出口(幽門)側を2/3以上を切除する幽門側胃切除術という方法です。他には入口(噴門)側を切除する噴門側胃切除、胃の全体を切除する胃全摘術などがあります(図3)。

図3

化学療法

薬剤を用いて治療する方法です。近年新たな薬剤も導入されてきており、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などを用います。手術でがんを取りきることが難しい、進行・再発胃がんでは化学療法による治療が主体となります。また手術後に再発の予防を目的として術後補助化学療法を行うことがあります。患者さんの病態に応じて、適切な薬剤を用いていくことが重要になります。

浜松医科大学上部消化管外科における取り組み

すべての胃がん症例に対して、消化器内科との合同カンファレンスにて治療方針を決定し、必要に応じて各科と連携して診療を行います。
手術においては、腹腔鏡手術などの低侵襲治療を積極的に行っています。

腹腔鏡手術(からだにやさしい内視鏡外科手術)

一般的な開腹手術では、おなかに約20cmくらいの大きなきずができます(図4右)。このような開腹手術では、きずの痛みを伴いやすく、美容も損ねます。それだけではなく、からだの負担が大きくなったり、おなかの中の炎症を伴ったりするために、胃腸の動きや体調が回復するのに時間がかかり、おなかの中の癒着も広範囲に起こりやすくなります。
一方、腹腔鏡手術でできるきずは、0.5〜1.5cmくらいのきずが数カ所と、切除した胃を取り出すための3〜5cmくらいのへそのきずが1ヶ所だけです(図4左)。このため術後の痛みも少なく、日常生活により早く復帰することができます。

図4

ロボット支援手術

ロボット支援手術は、上述の腹腔鏡手術の利点をさらに向上させ得る新しい手術手技です(図5a)。ハイビジョン3D画像による立体視や高性能な手術器具、手ぶれ防止機構などの機能により、従来の腹腔鏡手術での諸問題を克服する可能性をもっています。ロボットアームに装着する高性能鉗子は、操作ユニット(コンソール)で操作された執刀医の指示を正確かつ忠実に実行します(図5b)。ロボットの手術鉗子は多関節の高性能鉗子であり、曲がったり回転したり自由に操作することができます(図5c)。当科では2015年から胃がんに対するロボット支援下手術を導入し、これまでに良好な成績を得ています。

図5

センチネルリンパ節生検による個別化手術

腹腔鏡手術やロボット支援手術は、低侵襲治療と呼ばれるからだにやさしい手術ですが、胃の切除範囲やリンパ節の郭清範囲は開腹手術と同様です。すなわち、一般的には胃がんを切除する場合、内視鏡治療(粘膜だけの切除)と開腹/腹腔鏡/ロボット手術による胃切除術が選択肢となりますが、両者のからだに対する負担の差が大きいという問題点があります。リンパ節転移に対する適切な治療を行いながらも、もう少し小さな切除で治療が可能であれば、術後の胃の機能を温存できるのではと期待されます。そこで、乳がんや一部の皮膚がん(悪性黒色腫)でも臨床使用されている、センチネルリンパ節理論を胃がんに応用する臨床試験(先進医療)が行われており、当科でも実施しています。この方法では、手術中にリンパの流れを同定し、その流域にリンパ節転移がなければ胃の切除範囲を縮小し、少しでも胃を温存できる術式を選択することが可能になります(図6)。