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留学体験記 曽根田亘先生


静岡県立静岡がんセンター

この度は国内留学について報告する機会を頂き有難うございます。
2022年4月から2024年3月にかけまして、静岡県立静岡がんセンター胃外科で研修を行いましたのでここにご紹介いたします。

国内留学に至った経緯

私は2012年に浜松医科大学を卒業し、2年間の初期研修後に外科学第二講座に入局しました。後期研修として県内施設で3年間の研修を経て、2017年に病棟レジデントとして帰局、上部消化管外科の所属となりました。かねてより食道癌における手術手技や周術期管理の奥深さに興味があり、2018年には静岡がんセンター食道外科に短期レジデントとして1年間の研修をさせて頂きました。その経験を活かし、2019年から2021年の3年間は大学病院で主に臨床業務を担当させて頂き、救急部所属やチーフレジデントを経験しつつ竹内教授のもとで多くの症例で研鑽を積ませて頂きました。それに並行する形で内視鏡技術認定医を目指した腹腔鏡下胃切除手術の修練を開始し、さらなる症例経験や技術の向上を求めてハイボリュームセンターでの研修を希望していたところ幸運にも静岡がんセンター胃外科での修練にご縁があり、チーフレジデントとして再度静岡がんセンターへの国内留学を行う経緯となりました。

静岡県立静岡がんセンター・胃外科について

胃外科集合写真

まずは簡単に当センターの紹介をさせて頂きます。静岡がんセンターは駿東郡長泉町に位置し、最寄りの三島駅からは首都圏へのアクセスもよく、伊豆や熱海、富士山周辺などの景勝地も近く温暖で非常に過ごしやすい環境にあります。特定機能病院、静岡県がん診療拠点病院として県東部のみならず静岡県中部や山梨県南部、神奈川県西部までも広く医療圏としてがん診療を担っております。がん診療に特化した内科、外科に加え、感染症内科や緩和医療科など診療を幅広く支える診療科で構成されており、この恵まれた研修環境を求めて全国から多くの医師が訪れます。私が所属していた胃外科では原発性胃癌に対する手術が年間200例を超え、その他手術も含めると年間300例以上が行われています。腹腔鏡手術、ロボット支援下手術の症例も豊富であり、ここ近年では坂東部長のもと内視鏡技術認定医試験での合格者を多数輩出しており、若手教育にも大変力を入れております。胃外科レジデントはチーフを含めて8名が在籍し、全国から集まった若手同士でいずれも高いモチベーションのもと日夜修練に励んでいます。

チーフレジデントの業務について

チーフレジデントの研修についてご紹介します。チーフレジデントは通常ローテーションを含む3年間のレジデントコースを終えたのちに、所属科に限定した専門的研修を希望するレジデントが選択する研修プログラムです。またはレジデント研修を経ずとも、相応する臨床経験があると判断された場合に選択することも可能です。私の場合は、過去に食道外科の短期レジデントとして静岡がんセンターに在籍していた経緯もあり、このチーフレジデントコースを選択させていただきました。チーフレジデントの業務はレジデントとしての臨床業務の他、スタッフとレジデント間の調整役、手術予定や人員配置のマネジメント、各種学会活動でのレジデントのまとめ役など多岐にわたります。胃外科レジデントコース修了後のチーフではないことから、はじめは慣れない環境での調整に苦労しましたが、2年目のチーフレジデントの先生から丁寧な指導をいただけ、また大学病院での臨床経験を十分に活かすことができ積極的にチームの中に入り馴染むことができました。

ビデオカンファレンスの様子

イタリア、マレーシアから研修に来たDrと胃外科レジデント

手術に関しては開腹手術の助手から始まり、徐々に術者の担当が増えてきました。開腹症例は進行癌や化学療法後、他臓器合併切除の割合が高く、特に肝十二指腸間膜郭清や膵体尾部合併切除のようなこれまであまり経験のなかった症例もスタッフの指導のもとで執刀の機会をいただきました。定型手術のみならずこのような拡大手術も経験することができるのはがんセンターの特徴だと感じております。腹腔鏡手術の執刀は基本的にはレジデントに限定されており、スタッフの指導のもと定型化された静がん式メソッドを徹底的に勉強します。その豊富な症例数を活かし、内視鏡技術認定の取得のために短期間で多くの症例が集中して割り当てられます。1例ごとに綿密な振り返りを行い、課題や改善点をはっきりさせていくことで短期間での技術向上が実感できました。執刀以外のレジデントも手術中は術野外で積極的に議論を交わしており、適切な剥離層の維持や手順の確認、効率的な術野展開の方法について統一された認識の形成に余念がありません。チーフレジデントとしてもこのような場面でレジデントに対して積極的に指導をしていく必要があり、もともと大学病院で多くの執刀をさせていただいていた経験をがんセンターでさらに深めることにより、より一層の研鑽になったと感じています。現在では当科における進行癌に対する標準術式はロボット支援下手術となっております。今後ロボット症例はさらに増加していくことが予想されますが、レジデントへのロボット手術の修練も並行して開始され、私もロボット支援下胃切除術の初症例を執刀することができました。ロボット手術の台頭により若手外科医の症例経験が減少していくことが一般的に危惧される中、開腹、腹腔鏡、ロボットと多様な術式が経験できるがんセンターの利点は、今後の若手外科医の技術習得において大いに強みとなってくると感じました。

国際交流・学会活動について

Catholic University of Korea, St Mary Hospital

胃外科は特に国際交流の機会が多く、海外からの病院研修を多く受け入れています。中国や韓国、マレーシアなどのアジアをはじめ、イタリアやブラジルなどからも見学者が訪問していました。いずれも英語でのコミュニケーションとなりますが、世代の近い海外の外科医と語り合えることはまたとない貴重な経験でありました。私は当初英後が苦手ではありましたが、毎日のように英会話の機会があるため苦手意識も徐々に薄れていき、今では稚拙ながらも積極的にコミュニケーションを図れるようになりました。また国際学会への発表や海外研修の機会もあり、私はKorean International Gastric Cancer Association (KINGCA) WEEKのMaster Classに参加しCatholic University of KoreaのSt. Mary Hospitalへの短期研修と学会発表のチャンスをいただきました。韓国でも胃癌手術は非常に盛んであり、日本ではあまり見られないreduced port surgeryの見学や、同じくMaster Classに参加した同年代の胃外科との非常に貴重な交流の機会となり、今後へのさらなるモチベーションアップに繋がったと感じております。

最後に

このような研修の機会をくださった浜松医科大学外科学第二講座教授竹内裕也先生、研修を受け入れて頂いた静岡がんセンター胃外科坂東悦郎部長、寺島雅典副院長に心より深く御礼申し上げます。また自分の進路に悩む医局の後輩の先生方たちにとって、国内留学という一つの選択肢があることが私の実経験を通してお伝えすることができれば幸いです。技術の習得のみならず、この国内留学で多くの学外の外科医たちと接した経験により得られた広い視野や知見をもとにこれからも精進して参ります。

KINGCA WEEK 2023にて 
同じくMaster Classを修了したDr. Tang(マレーシア)、Dr. Tian(中国)と