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下部消化管外科


臨床研究

①手術体位により生じる手術関連圧障害に関して

腹腔鏡下手術とロボット支援下手術の普及に伴い、砕石位手術の際に生じる下腿のコンパートメント症候群(Well-leg compartment syndrome : WLCS)が問題となっております。腹腔鏡下砕石位手術を施行するS状結腸以下大腸癌患者50人を対象とし、SRソフトビジョン®を使用し術中の左下腿内側の外圧を経時的に測定し検討を行いました。測定の結果、右下頭低位とすることで、左下腿の外圧は有意に上昇し、術中も経時的に増大する事が明らかになりました。更に、BMIと下腿周囲径は、右下頭低位後30分における左下腿圧と正の相関を認めました。今回の研究結果として、術前下腿周囲径の測定がWLCS発生リスク管理に重要であることを報告しました。

②家族性大腸腺腫症に関して

大腸全摘除後の長期成績が術式により異なることを報告しました。最近では、静岡県内遺伝性大腸癌診療のネットワーク形成に向けて、多施設共同研究を行っております。家族性大腸腺腫症に関する本邦のevidenceは非常に少ないため、更なる知見を得るため、静岡県内の日本外科学会指定・関連施設及び、日本消化器病学会認定施設である12施設からなる“SFAP Registry”を立案しました。今後、このレジストリを活用した研究や臨床応用を目指していきます。

③Lynch症候群に関して

当院では2016年9月より全大腸癌切除症例に対して免疫染色法によるユニバーサルスクリーニングを開始し、2020年1月から、消化器外科医、消化器内科医、臨床遺伝専門医、遺伝カウンセラー、病理医による多職種チームを発足し、診療体制の整備を行いました。更に、BRAF V600EやMLH1メチレーション検査の代わりに、遺伝カウンセラーによるプレ遺伝カウンセリングとアムステルダム基準Ⅱまたは改訂ベセスダガイドラインから構成された除外基準を設けた当院独自のLynch症候群診断アルゴリズムを開発しました。現在、我々が独自に構築したLynch症候群診療のための診断アルゴリズムを多施設に導入し、情報共有することで、遺伝性消化器疾患に対する充実した診療体制の構築が可能になると考え、現在臨床研究を継続しております。

基礎研究

①腸炎関連性発癌(CAC)の発癌機序に関して

CACは炎症性腸疾患患者において重要な予後規定因子の一つとして知られておりますが、その発癌メカニズムはまだ不明な点が多く、予防法の確立は重要な課題と考えられます。当科では、腫瘍微小環境を構成する腸管筋繊維芽細胞(IMF)の遺伝子発現プロファイルを解析することにより、IMFが産生するtenascin-CがCACの前癌病変であるdysplasiaの段階より、腫瘍進展に強く関連する事を報告しました。

論文

1 Suzuki K, Sakata M, et al. Analysis of external pressure on the left calf in the Lloyd-Davies position during colorectal surgery. Surg Today. 2023. 53:145-152.
2 Kawamura T, Yamamoto M, et al. Tenascin-C Produced by Intestinal Myofibroblasts Promotes Colitis-associated Cancer Development Through Angiogenesis. Inflamm Bowel Dis. 2019. 14;25:732-741.